トマトは南米のアンデス山脈が原産地といわれていますが、メキシコ説やペルー説などさまざまです。その中でも有力視されているのが、アステカ文明が栄えたメキシコ地方です。アステカ人は栽培したトマトをトマトル(tomatl=膨らむ果実の意)と呼び、それがトマトの語源になったといわれています。ヨーロッパに16世紀に伝えられたトマトが食用として扱われるようになったのは19世紀になってイタリアのナポリでトマトソースが生まれてからです。その後ヨーロッパ各地で品種改良を進めながら広がったトマトは現在世界各地で栽培されています。スペインでは“愛のりんご”、イタリアでは“黄金のりんご”、ドイツでは“天国のりんご”と呼ばれ愛されている野菜のひとつです。
日本への伝来は17世紀ですが、赤い色と酸味が敬遠され、もっぱら観賞用に使われていました。本格的に市場に出回り始めたのは昭和になってからというのには驚きです。戦後急速に生産量を伸ばしたトマトは品種改良が進んで、様々な食味や形の品種が出回っています。 |
品種 |
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現在主流となっている完熟型トマトは桃色系と呼ばれるアメリカで開発された品種から生まれました。
一世代前に主流だった品種にファーストトマトがあります。果実の先端がピンととがっているのが特徴です。種周辺のゼリー状の部分が少なく、果肉が締まっており、身崩れが少ないので、サラダやオードブルにおすすめです。近年完熟系に押され気味で生産が減少していますが、昔を思い出させてくれるトマトの甘さが好評で、根強い人気があります。
対し、完熟型は樹の上で熟したものを収穫するため、甘みが強いのが特徴です。現在、流通量が最も多い桃太郎トマトもこの完熟型です。
桃色系は着色の割合が5~6割で収穫するのに対し、完熟型は9~10割の着色率で収穫します。
また最近ではフルーツ感覚で食べられるフルーツトマトやミディトマトなどと呼ばれる中・小型の高糖度トマトも人気があります。詳しくはこちら。 |
選び方 |
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全体の色が均一で皮に張りがあるものを選びましょう。ヘタやガクの部分が濃い緑色で枯れていないものが新鮮です。また、手に持ってみて重量感のあるものを選び、変形しているもの、傷のあるものは避けたほうがよいでしょう。他にも水に浮かべて沈むものは糖度が高いと判断できます。でも店頭で実践できないので家庭で確認してみてもよいでしょう。 |
保存法 |
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2~3日の保存なら、常温で保存すると甘みが増してよいでしょう。しかし完熟型のトマトは熟れ過ぎを防ぐため、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れておきましょう。それでも4~5日で食べることが大切です。 |
栄養価 |
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ご存知の方も多いでしょう。「トマトに含まれるものといえば?」と質問すると大半が「リコピン」という答えを返します。そのトマトの代名詞ともいえるリコピンについて説明しましょう。
そもそもリコピンとはカロチノイドという赤い色素の中のひとつで、カロテンの仲間です。トマトの赤い色の正体はこのリコピンなのです。赤色が濃いほど多量のリコピンを含んでいます。カロテンは体内でビタミンAに変化しますが、リコピンは変化せずに体内で力を発揮します。 |
リコピンの効果 |
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● 抗酸化作用
体内で粘膜や組織を傷つけ、生活習慣病を引き起こす原因ともなる活性酸素を除去する働きをもっており、そのパワーはβカロテンの2倍、ビタミンEの100倍にも相当します。
活性酸素の悪行
〇ガン細胞を発生させたり、先天性異常の原因を作る。
〇細胞を傷め、老化を促進させる。
〇悪玉コレステロールを酸化させることにより、動脈硬化を促進させ、心臓病や脳血管疾患の原因となる。
〇アレルギー反応を促進し、アレルギーの起こりやすい体にしてしまう。
〇紫外線の害を促進し、シミ・ソバカスの発生を促す。
リコピンは上記の活性酸素の働きを抑制し、われわれの体を守ります。
● 免疫力を向上させる
風邪等の予防や早期治療に効果を発揮します。 トマトにはリコピン以外にも健胃効果のあるビタミンUや血圧を低下させるガンマアミノ酪酸などを含んでいます。 また500g(大玉2個)程度のトマトを摂ることにより1日のリコピン所要量15gを摂取できます。活性酸素はストレス、喫煙、紫外線、大量飲酒により増加しやすいといわれています。現代人の錆びついた体をトマトは正常に回復へと導いてくれます。一時的な摂取ではなく、継続して食べられることをおすすめします。 |
レシピ |
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フレッシュトマトを使ったエビチリソース
材料(4人分)
トマト3個、エビ20尾
A(酒小さじ2、塩・コショウ・片栗粉各少々)
にんにく・生姜(各みじん切り)各小さじ1.5、長ねぎ(みじん切り)大さじ4、豆板醤小さじ2、しょうゆ大さじ1.5、砂糖大さじ1/2、片栗粉大さじ1.5、、ごま油少々、揚げ油適量、香菜(ハーブ類でも可)少々
①エビは背ワタを取り除き、Aで下味をつけておきます。
②トマトは皮を湯むきして乱切りにします。
③揚げ油を中温(170~180℃)に熱して、①のエビを入れ、殻までカラッと揚げて油を切ります。
④③の油を大さじ2ほど残してあけ、にんにく、生姜、長ねぎのみじん切りと豆板醤を入れてよく炒め、②のトマトを加えます。
⑤さっとひと炒めしたらしょうゆと砂糖を加え、③のエビを戻します。全体を絡めるように炒め、水溶き片栗粉を加えてとろみをつけ、ごま油をふります。
⑥⑤を器に盛り付け、香菜を散らして出来上がりです。フレッシュトマトを使うと市販の缶詰トマトより自然の甘みと酸味が味わえます。
トマトのホットオードブル
材料(4人分)
トマト4個、ズッキーニ1本、黄パプリカ1個、オリーブ油大さじ1
A(塩・コショウ各少々、粉チーズ大さじ3)パン粉適量、塩・しょうゆ各少々
①トマトは上部を横に切って中身をくり抜き、軽く塩をふって布巾の上に伏せて水気を切っておきます。
②くり抜いた中身と切れ端はみじん切りにします。
③ズッキーニとパプリカは5mm角に切り、オリーブ油でさっと炒めてAと混ぜ合わせます。
④③に②のトマトのみじん切りを混ぜてトマトの器に詰め、パン粉をふって200℃のオーブンで8~9分焼き、取り出してしょうゆをたらして出来上がりです。
トマトの冷製スープ
材料(4人分)
トマト2個、にんにく1片、玉葱1/4個、セロリ・胡瓜各5cm程度、赤ピーマン(パプリカ)1/2個
A(アーモンドパウダー・生パン粉各大さじ2)B(白ワインビネガー大さじ1~2、オリーブ油大さじ2、塩小さじ1/2、コショウ少々)
①トマト、胡瓜、セロリは5mm角の浮き実用を残し、すべて粗みじん切りにします。
②①の材料とAをフードプロセッサに入れて、ピューレ状になるまでミキシングします。
③②を目の細かいザルでこしてからBで味を調えます。
④冷蔵庫で冷やした後、浮き実を浮かべて出来上がりです。
トマトとアボガドの和風サラダ
材料(4人分)
トマト2個、アボガド1個
A(酢大さじ1、オリーブ油大さじ1.5、しょうゆ小さじ1、塩・コショウ各少々、すりおろしわさび小さじ1、すりおろし生姜小さじ1/2)
①トマトはやや大きめの一口大に切ります。
②アボガドは縦にぐるりと切込みを入れて半分に割り、種を取り除いて皮をむき一口大に切ります。
③ボウルにAの調味料を入れてよく混ぜ合わせ、①と②を加えて混ぜ合わせ、盛り付けて出来上がりです。 |