戦中戦後の食料難時代に、さつま芋とともに日本人を救ってくれたかぼちゃ。日本で栽培されているかぼちゃには、日本かぼちゃ・西洋かぼちゃ・ペポかぼちゃの三種類がありますが、原産地はいずれもアメリカ大陸といわれています。
その3種類のうちで現在、店先に並ぶのは西洋かぼちゃが主流です。味の面では日本かぼちゃが上で、栄養面では西洋かぼちゃがすぐれているとされています。最近では、カロテンをたっぷり含み、ビタミンの補給源として、健康志向にマッチした野菜としてのイメージも定着し需要は安定している。
冬至にかぼちゃを食べる習慣が生まれたのは野菜の少ない冬の栄養補給のため、保存のきくかぼちゃで補おうとした先人の知恵のたまものです。今日輸入ものを含めて、各産地のいろいろな種類が一年中出回っています。 |
名の由来 |
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ポルトガル人によってカンボジアからもたらされたことから由来する。 漢字の「南瓜」は南方から渡来したうりの意味。地方によって別の名がつけられ、北海道・東北・関東では「とうなす」、関西では「なんきん」、九州や西日本では「ぼうぶら」などと呼ばれる。 |
来歴 |
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日本かぼちゃは中央アメリカの原産で、16世紀にポルトガル人によって九州に渡来したといわれています。日本の気候に適して急速に各地に広まり、関東以南で多くの品種が分化した。1960年ごろまでは日本かぼちゃが主流であった。西洋かぼちゃは、南アメリカの高原地帯の原産で、日本には幕末(19世紀)に渡来し、北海道を中心に高冷涼地に分布した。第2次世界大戦のあと、良質の早生品種が育成され、被覆資材の発達などで、暖地でも栽培が可能になった。食生活の洋風化や嗜好の変化により、1960年代以降、日本かぼちゃにて需要が急増しました。
ペポかぼちゃは、ポンキンとも呼ばれる西洋かぼちゃの一種で、日本では観賞用や飼料用に多くつかわれましたが、色や形のおもしろさを生かした観賞用として人気があります。1980年代に入り、新野菜の一つとして、ズッキーニが登場しました。 |
品種 |
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日本かぼちゃの多くは表面に溝やこぶがあり、「菊かぼちゃ」ともいわれる。主力は「黒皮かぼちゃ」。果皮が黒緑色でこぶが多く、深い縦溝があるのが特徴。肉質は緻密で粘り気がある。
代表的なものに宮崎県の「日向かぼちゃ」がある。現在の品種は会津・黒皮・菊座群の一代雑種で早生種が主体である。
西洋かぼちゃは大別すると、果皮の色によって灰緑色の青皮系、濃緑色の黒皮系、朱色の赤皮系に分けられる。
青皮系の「芳香青皮」。黒皮系の「えびす」、「みやこ」が主流になっている。
えびすは栗かぼちゃの一種で、最も多く出回っている品種。赤皮系の代表的なものに「打木、赤皮栗かぼちゃ」があります。皮がそれほど硬くなく、果肉はほくほくしている。
現在流通している品種は、西洋種の改良種が中心である。えびす・みやこ・くりあじ・くりじまんなどがある。ペポかぼちゃは、古くから栽培されているのは、“金糸瓜”(そうめんかぼちゃ)がある。
ズッキーニは未熟果を食用し、肉質はなすに似て、ほのかな苦みがある。果皮が緑色の一般的なものから、黄色いイエローズッキーニ・花ズッキーニなどの種類がある。 |
選び方 |
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品種を問わず、ヘタの枯れた、ずっしりと重いものを目安に選びます。
日本かぼちゃは、果皮に白い粉を吹いているものがよい。
西洋かぼちゃは皮の表面がなめらかで、ツルリとして光沢があり、硬いもの。緑色が濃く、縞模様がはっきりしているのもチェックのポイント。
カットで売られている場合は、果肉が濃い黄色をしていて、種がしっかりついているもの。また、肉厚なものを選びます。ペポかぼちゃは皮がなめらかで、色つやがあるものがよい。 |
保存法 |
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丸ごとのものは、室温が10℃前後なら風通しのよい所で長期保存が可能です。
カットされたものは冷蔵庫へ入れます。早めに食べるのがよいです。 |
栄養価 |
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栄養価の高い緑黄色野菜。ビタミン類が豊富で、カロテンを含む、ビタミンA効力に優れた野菜です。
そのほかビタミンB1、B2、Cも多く、日本かぼちゃよりも、西洋かぼちゃに多く含まれます。また、カルシウム・鉄分もバランスよく含んでいます。
体の抵抗力を高め、生活習慣病予防にも効果的。一度にたくさん食べられるので摂取量の点でも優等生です。
風邪の予防・ガン予防・夜盲症予防・食欲増進・夏バテ防止。種は捨てずに、天日で乾燥して、フライパンでいって中身を食べる。中国では古くから高血圧や、動脈硬化予防に用いられました。リノール酸・オレイン酸など良質の油脂分を豊富に含んでおります。健康維持に役立ちます。 |
レシピ |
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調理法
日本かぼちゃは主にねっとりとした舌ざわりを生かして煮物・蒸し物・揚げ物など。
西洋かぼちゃは粉質でホクホクした栗のような味が特徴。焼き物・揚げ物・炒め物・スープなど、どんな料理にも向き、パイなどのお菓子にも利用できる。
ペポかぼちゃはそれ自体にはほとんど味がないので、肉や魚、ほかの野菜などと煮込んだりするとよい。金糸瓜はゆでると果肉が糸状にほぐれる。酢の物・和え物・炒め物など。
ズッキーニはイタリア料理に用いられることも多く、煮込みや炒め物などにされる。
調理のコツ
切り方
かぼちゃは皮がとても硬いので、切るときはよく切れる大きめの包丁で、しっかりと安定させた状態で切ることが大切です。半分~3等分に切ったら、まずスプーンで種をきれいにかき取ります。ワタは少し残した方がダシがしみこみ易くなります。切り口を下にして大きく切ってから、好みの大きさに切り分けます。
クシ形にする場合は調理法によって厚みは違いますが、縦に切り分けます。クシ形切りを薄切りにして、さらに斜め切りにすると千切りになります。こうすると緑の皮の部分が美しく映えます。尚、料理によっては皮を先に剥いてから小さく切ることもあります。
ひと味アップ
かぼちゃの皮にはカロテンなどの栄養成分が豊富なので、なるべく皮ごと調理したい野菜ですが、味が含みにくくなるので、ところどころ皮を剥く場合があります。また、面取りをすると煮崩れしにくくなり、仕上がりもきれいです。
加熱
日本かぼちゃは味が淡白なので、薄いしょうゆ味の煮物にしたり、肉を詰めて蒸す印籠蒸しなどの調理法が一般的です。一方西洋かぼちゃは加熱する甘みが増してホクホクに仕上がるので、鉄板焼き、グリル、ソテー、フライなどに合います。
煮る場合は入れる水の量を少なくし、味付けした後沸騰するまで強めの火で煮ます。沸騰したら弱火にしてさらに煮込みます。またピューレスープは熱いうちに裏ごしするのが大事です。
サラダに入れるときは茹でるよりも蒸したほうが水っぽくなりません。蒸すときは必ず蒸気の上がった蒸し器に入れます。また、電子レンジで加熱する方法もおすすめです。煮物やソテーの下ごしらえとしても有効です。出力500wの電子レンジなら、400gで約5分が加熱時間の目安です。加熱しすぎるとモソモソになってしまうので注意が必要です。
カボチャ雑炊 ~なめこでなめらかさをプラス。野菜を多めに入れたヘルシーな雑炊~
材料(4人分)
カボチャ100g 豚薄切り肉100g 小松菜4株
なめこ少々ご飯(茶碗に)4杯 だし汁8カップ 酒 塩 醤油
① カボチャは薄切りにする。
② 豚肉はひと口大に切る。
③ 小松菜は4~5㎝幅のザク切りにする。
④ なめこはザルに入れ、流水をかけながらサット洗って水気をきる。
⑤ ご飯はザルに入れてサット洗い、粘りを取る。
⑥ 鍋にだし汁を入れて火にかけ、豚肉を入れて煮立て、アクをすくいながら火を通す。
⑦ ご飯とカボチャを入れてひと煮し、酒大さじ2、塩小さじ1、醤油小さじ1で味を整え、小松菜、なめこを入れてひと煮する。
《point》ご飯を入れてからかき混ぜると粘りが出ておいしさが半減します。ご飯と豚肉・野菜で味をつけずにおかゆを作り、醤油味のあんをかける方法もあります。
蒸しかぼちゃのサラダ
材料(4人分)
黒皮栗かぼちゃ1/3個 玉ねぎ1/2個 A(にんにく・しょうが〈各みじん切り〉各大さじ1 酢大さじ2 サラダ油大さじ3 塩小さじ2/3 コショウ少々)パセリ〈みじん切り〉少々 レタス適量
①かぼちゃはワタや種をきれいに取り除き、1.5cm厚さのクシ形切りにして皮をところどころ剥きます。
②玉ねぎは薄切りにして水にさらし、水気を切っておきます。
③Aを混ぜ合わせてドレッシングを作ります。
④蒸気の上がった蒸し器に①のかぼちゃを並べ入れ、強火で蒸します。竹串を刺してみてすっと通るほどやわらかくなったらバットなどに並べ、②の玉ねぎを上に散らします。熱いうちに③のドレッシングをかけ、そのまま冷やします。
⑤器にレタスを敷いて④を盛り付け、パセリのみじん切りを散らして仕上げます。
かぼちゃのチーズ焼き
材料(4人分)
西洋かぼちゃ1/4個 ローリエ1枚 塩少々 オリーブ油大さじ2~3 にんにく1かけ パルメザンチーズ(すりおろす)30~40g
①かぼちゃは2cm厚さのクシ形に切り、さらに横半分に切ります。鍋にたっぷりの湯を沸かし、ローリエと塩を加えてかぼちゃを入れ、やや硬めに茹でて水気を切ります。
②フライパンにオリーブ油と半分に切ったにんにくを入れて弱火にかけ、にんにくが色づいて油に香りが出てきたら、にんにくを取り出します。
③①のかぼちゃの両面にパルメザンチーズをまぶしつけ、②のフライパンに並べ入れて中火で焼きます。香ばしい焼色がついたら裏返して焼き上げ、器に盛り付けて残ったチーズをふりかけます。
メモ:ここではかぼちゃを茹でましたが、電子レンジで加熱するとさらに簡単です。やや硬めに加熱したほうが焼いたときに崩れにくく、ホクッと仕上がります。
かぼちゃのポタージュ
材料(4人分)
黒皮栗かぼちゃ1/4個 玉ねぎ1個 固形スープの素1個 水6カップ 牛乳・生クリーム各1カップ 塩適量 バター大さじ2 クルトン(市販品)少々
①かぼちゃはワタと種を取り除き、皮を厚めに剥いて薄切りにします。
②鍋に①のかぼちゃと玉ねぎを入れ、分量の水と固形スープの素を加えて強火にかけます。
③②が煮立ったら弱火にし、アクを取りながらコトコトと煮ます。
④③のかぼちゃが煮崩れるほどやわらかくなったら、熱いうちに裏ごしするかミキサーにかけて鍋に戻します。
⑤④の鍋を中火にかけてトロッとするまですこし煮詰め、牛乳を加えて弱火にします。15分ほど煮たら生クリーム1/4カップを加えて混ぜ合わせ、塩味を調えます。
⑥⑤にバターを加えて火を止め、余熱で混ぜながら溶かしたら器に注ぎます。クルトンを浮かべて残りの生クリームをたらして仕上げます。
メモ:かぼちゃと玉ねぎをバターで軽く炒めてから煮込む方法もあります。また生クリームが無いときは、煮汁の水を少なめにして、牛乳で代用しましょう。 |