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せ り
密生し、競い合って生えることから名付けられたせり。金沢では浅野川の流水に恵まれた諸江地区を中心に生産されています。

全国で栽培されているせりの中でも最も茎が細く、彩りと独特の香りで評価が高いのが特徴です。
春の七草の筆頭。1月7日に春の七草で作った粥を食べて無病息災を願うという習慣は奈良時代からあったといわれています。ビタミンを補う先人の知恵です。

出回り期
10月中旬~4月下旬。ピークはお正月用の出荷時で、1月下旬ごろまで。
ハウス栽培が盛んになるにつれ、冬でも青物が出回るようになりました。
産地は諸江・弓取地区が中心です。

選び方
葉がいきいきとして黒ずんでいないものを選びましょう。
葉が太過ぎたり、一本ずつ分かれていないものは固いのであまり好ましくありません。

保存方法
0℃以上5℃以下で保存して下さい。
風に当たるとしおれたり、香りがなくなったりします。

栄養
ビタミンA、C、カルシウム、鉄分を含みます。
和え物にして酒のつまみにすると飲酒後の熱を取る、生の絞り汁を飲むと鼻血、歯茎からの止血に効くなど、昔からユニークな効用が伝えられています。

他にも、刻んで熱湯を注ぎ、お茶代わりに飲むと利尿作用があり、膀胱炎によいとされています。また、高血圧、便秘、身体を温め、精を養い、血を清浄に保つ効き目があります。

食べ方
金沢では正月のお雑煮になくてはならない食材です。
せりは本来、香りと彩りを楽しむもの。薬味として、雑煮の他にも酢の物、雑炊、茶碗蒸などに添えるのが一般的。ただし、味を損なわないよう煮過ぎに注意しましょう。

料理レシピ

せりのおすまし
材料(4人分)
せり 1把
だし汁 4カップ
塩 小さじ1
醤油小さじ1
麩(小さいもの)12個
①せりは2~3センチの長さに切る
②だし汁を強火でひと煮立ちさせ醤油、塩を入れ味を調える。
③②に麩をいれ煮立たせて、火を止めてセリを入れ、器に盛る。

せりとあさりの卵とじ
材料(4人分)
せり300g(3把)
卵2個
あさりのむき身100g
①せりはきれいに洗い5~6センチの長さに切る。
②あさりのむき身はさっと洗う。
③だし汁と調味料を合わせて煮立て、むき身をさっと煮て取り出し、その後にせりを加え2~3分煮てあさりを戻す。
④卵をだし汁で溶いて流し入れ、蓋をして約30秒、半熟状に煮えたら器に煮汁ごと盛る。

ごまひたし
材料(4人分)
せり300g(3把)
えのきだけ100g
①せりはきれいに洗い塩少々加えた熱湯で約1分茹で、水にとって色止めし軽くしぼって4センチの長さに切る。
②えのきだけは熱湯をかけ、根元を除いて半分に切る。
③せりに醤油、だし汁を合わせたものの1/4量をかけて下味をつけ固くしぼってからほぐす。
④②と炒った胡麻を包丁で細かく切ったものをせりに混ぜ、残りのだし汁、醤油をかけて和える。
⑤器につけ汁ごと盛る。

柳川風
材料(4人分)
せり200g
卵2個
うなぎの蒲焼き1串分
①うなぎの蒲焼きは2センチ幅に切る。
②せりはザク切りにし、卵はほぐしておく。
③鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖を煮立てうなぎを入れて弱めの中火で2~3分煮る。
④溶き卵を全体に回し入れ、せりを散らしてふたをする。
⑤弱火で卵が半熟状態になるまで煮る。よく固まっていればそのまま余熱で火を通す

治部煮
材料(4人分)
せり300g
生麩 小 1本
鶏肉150g
しいたけ 4枚
①鶏肉はそぎ切りにし、小麦粉をたっぷりまぶす。
②生麩は角切りにし、シイタケはいしづきを取り、飾り包丁を入れる。せりはきれいに洗い塩少々でゆで水にさらし、軽くしぼって4センチの長さに切っておく。
③鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖を入れて煮立て生麩、しいたけを煮、①をいれて火を通す。
④器に生麩、しいたけを盛り、せりを煮汁にくぐらせて盛り、煮汁をかけ、わさびを天盛にする。

あくがあるので茹でてから水にさらすなどの適当なあく抜きが必要。
おひたし、和え物、汁の実、かゆ、鍋物、茶碗蒸などに良く使われる。

 追 記
北陸でのせり栽培はその気候風土から、他の産地よりも苦労が多い。特に冬場は大変で、温度管理・積雪時の雪どけなど生産者は手が抜けない。雪がおおいかぶさると、柔らかいせりはすぐに押しつぶされてしまう。
30cm~40㎝程に伸びたら収穫を行い、根を少し付けて水中で鎌を使って切る。その中から黄色く変色した葉を取り出し束ねる。1時間に15~20把しかできない手間のかかる作業である。

諸江は、良質の湧き水が出てせり栽培の適地。昭和30年頃が最盛期で、約50世帯で栽培されていた。
しかし、せりと競合するみつばなどに押され、昭和50年から60年の10年間に生産量は1/3に減少した。それ以後も、生産者の高齢化で減少を続け、収量も少しずつ減っている。
セリの出荷は寒冷期に行われ、冷たい水の中に入って摘み取ったり、セリを束ねるなどの作業が若い人に敬遠されてきた。現在の生産者は大半が60歳以上。周りに住宅が建て込んで日当たりが悪くなるなどの問題も発生して、現状維持が精一杯。なんとか減少に歯止めをかけ、盛り返したい食材である。

川柳~「鍋物の鴨とせりは二世の縁」
鴨とせりは、生きているときは水辺で一緒に暮らし、捕獲(収穫)された後も鍋物でまた一緒になるという、両者の相性の良さを表しています。この縁起をかついで、諸江地区では結婚式の引き出物に鴨とせりのセットを使う習わしがありました。ただし、現実には鴨がせりをつついて売り物にならなくしてしまう被害も多く、せりの生産者にとっては困ったパートナーといえるかもしれません。

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