歴史 |
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ペルシャ(イラン)原産で古代から食されてきました。西へはシリアからエジプトに伝わり、さらにギリシャに伝わって「カルタゴのりんご」と呼ばれました。種が多いことから、ギリシャ・ローマ時代には「豊穣のシンボル」とも呼ばれたようです。また、スペインの町グラナダの「グラナダ」とはザクロを意味する言葉です。やがて地中海沿岸地域が主産地となり、アメリカに伝わったものはフロリダ・ルイジアナ州など東部で広まりました。
約2000年前、ペルシャ北部の安石国からシルクロードを経由してアジアに伝わってきました。日本には平安時代に中国から伝来したと考えられています。当時は主に花の観賞や薬用として使われました。日本で育てられた品種は実の非常に酸っぱいもので、果物屋で売られるというよりは庭木として親しまれてきたものです。 現在ではアメリカのカリフォルニア州、アリゾナ州やイタリア・スペインなどの地中海沿岸諸国、インド、中国などで果樹として栽培されています。 |
産地 |
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ザクロは日本での栽培は非常に少なく、市場に流通しているものはアメリカ・カリフォルニア産又はイラン産です。品種は大粒のワンダフル系統です。 |
食べ方 |
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国内産は割れたところから赤い果粒を手で出して食べます。しかし、輸入物は割れないので、花落ち部分を落とし、櫛形に切ると食べやすくなります。可食率はたったの20%程度。また、種の周りのゼリー状の部分も食べられます。 |
見分け方 |
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色が濃く、実のしっかりとしたものを選びましょう。 |
栄養価 |
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ザクロにはビタミンB1、ビタミンC、ナイアシン、カリウム、エラグ酸、クエン酸他各種成分が幅広く含まれている健康的な果実です。 |
世間を賑わしたエストロゲン騒動 |
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1999年から2000年にかけて、日本では空前のザクロブームが沸き起こりました。中央卸売市場にも引き合いが殺到し、慢性的な品不足状態。ブームに乗って、各企業がさまざまなザクロ飲料水、健康志向食品、エキス錠剤などを開発・販売しました。きっかけはマスコミによる報道で、曰く「ザクロに含まれるエストロゲン(女性ホルモン)には、更年期障害の予防・改善効果があり、男性の抜け毛予防にも役立つ!」などなど。
しかしその後、国民生活センターより「こうした食品からはエストロゲンが一切検出されなかった」とする調査結果が出たり、「いや、エストロゲン自体は含まれていないが、エストロゲン様物質あるいはエストロゲンを活性化させる物質が入っている」「種の苦い部分にのみ含まれるので、それを摂取しなければ無意味なのだ」「取りすぎちゃダメ!」等々のいろいろな情報が流れ、確たる決着のつかぬままいつのまにかブームは沈静化した感があります。 |
品種 |
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アメリカ系・・・ワンダフル、ロバータ
スペイン系・・・グラナダ などが有名。
インド、アフガニスタン、イランなどには種が小さい品種もあるようです。 |
雑学 |
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☆漢字で書くと・・・
ザクロを漢字で書くと「石榴」、または「柘榴」と書きます。
ザクロは、ペルシャ北部の「安石国」からシルクロードを通って中国に伝わり、形が瘤(こぶ)に似ていることから「安石瘤」と呼ばれました。それを略して「石瘤」となり、さらに字を変えて「石榴(せきりゅう)」としたようです。
☆名前の由来
中国人が、ペルシャ湾の東・ザクロス山脈から持ち帰ったことによると考えられています。
☆紅一点
たくさんの男性の中に女性がたった一人いることを「紅一点(こういってん)」と表現します。この言葉の語源は、中国の詩人・王安石の詩「石榴詩」にあります。一面の緑の草原の中に一輪だけ咲いている赤い花の美しい情景を詩いあげたもので、この花がザクロの花なのです。確かに、ザクロの木には、非常にきれいな赤い花が咲きます。
☆頭がかち割れた様!?
小さいころ本を読んでいたら「ザクロのように頭がかち割れ・・・」という表現が出てきて、こども心に「あぁ、人間の頭がかち割れたらあんなふうになっちゃうのか・・・」と妙に納得した記憶があなたにもあることでしょう。日本の庭などによく成っていたザクロの実は、熟すと割れ出すという特徴がありました。割れた部分から見える赤いツブツブがやけに生々しいことから、昔はよく上記の表現が文章に使われたものです。しかし、最近はあまり見かけなくなりました。近年食される市販のザクロは輸入品で、果実が割れない品種であることがその理由の一端を担っているのかもしれません。
☆ザクロは人肉の味!?
小さいころ、おばぁちゃんからザクロを手渡され、「食べてごらん。この実は人の肉とおんなじ味がするんだよ。」と教えられてびっくりした記憶があなたにもあることでしょう。言われてみれば、ザクロを食べると口の中が真っ赤になって、まるで血がしたたっているようにも見えますが・・・。
もちろんこれは迷信。ですが「ザクロ=人肉の味」のいわれは、「鬼子母神伝説」という興味深いお話から来ているのです。
☆鬼子母神伝説
鬼子母神伝説は、お釈迦様の「法華経」の中に出てきます。鬼子母神は500人もの子供を持つ美しい神様でしたが、自分の子供達を育てるため、なんと人間の子供をさらっては食べていたのです。これを知ったお釈迦様は、鬼子母神の末っ子を神通力によって隠してしまいます。鬼子母神は嘆き悲しみ、必死に我が子を探しますがみつからず、困り果ててお釈迦様に助けを求めました。お釈迦様は「お前は500人も子供がいるのに、たった1人がいなくなっただけでこんなにも嘆き悲しんでいる。たった数人しかいない子供をお前に奪われた人間の親の気持ちが、これでお前にもわかっただろう。」と言って鬼子母神に子供を返しました。そして、「今後、どうしても人の子が食べたくなったら代わりにこれを食べよ」と与えられたのがザクロだったそうです。鬼子母神は改心し、以後は仏教の教えを守る、安産と育児の神様となりました。そんなわけで、鬼子母神は左手に子供、右手にザクロを持っています。
☆吉祥果
ザクロは、子孫繁栄をあらわす縁起の良い果実とされ、仏教では「吉祥果」というおめでたい呼び方をします。鬼子母神が手にザクロを持つのも、人肉の味がするからというよりは、子孫繁栄を願う仏教の思想が反映されていると考えるべきでしょう。 |
簡単レシピ |
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●ザクロの果実酒
材料
ザクロ2~3個、氷砂糖(またはグラニュー糖)、ホワイトリカー(または焼酎)
①ザクロの粒を取り出し、粒の重さを量る。
②密閉できるビンに、ザクロの粒と氷砂糖(グラニュー糖)を入れ、ホワイトリカー(焼酎)でつける。このときの砂糖の量は粒の重さの1/5程度。お酒の量は粒の重さの2倍程度。
③約2ヶ月ほどで果実酒のできあがり。オンザロックやソーダ割でご賞味ください。
●ザクロシロップ
材料
ザクロ2個、氷砂糖
①ザクロの粒を取り出し、重さを量る。
②密閉できるビンに、ザクロの粒と氷砂糖を入れ、冷蔵庫に入れる。この時入れる砂糖の量は、ザクロの重さの半分~同量をお好みで。
③約2週間ほどで美しいルビー色のシロップができあがり。シロップは冷凍保存すれば長期保存がききます。 |