来歴 |
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さくらんぼの歴史は古く、有史以前から食されていたと考えられています。原産地はアジア西部で、黒海沿岸からヨーロッパへと伝播し、17世紀にはアメリカ大陸に渡りました。 系統は大きく分けて3つあり、セイヨウミザクラ(甘果桜桃)、スミノミザクラ(酸果桜桃)、シナノミザクラ(中国桜桃)に分かれます。このうち中国桜桃は現在ほとんど作られておらず、日本で作られているほとんどはセイヨウミザクラに属します。日本には、明治初期に欧米から導入されました。明治元年、ドイツ人のガルトネルが北海道に六本のさくらんぼを植え、その後、北海道開拓使がアメリカからセイヨウミザクラの苗木を輸入し、これが北海道や東北地方に広まり、各地で独自の改良が施されるようになったのです。 |
出回り・産地 |
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ハウス栽培の進歩によって出荷時期は長くなりましたが、十分に堪能するにはやはり旬である6月が食べ頃でしょう。 金沢市中央卸売市場では旬に入ると売り場いっぱいにさくらんぼが並べられ、賑やかにセリ売りが行われます。品種の中心は佐藤錦で、国産さくらんぼの90%以上を占めます。 産地の中心はなんといっても山形県。さくらんぼ王国と言われる県で、全生産量の75%を占めています。その他の東北・北海道、山梨や長野でも栽培が盛んです。 |
見分け方 |
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粒が大きく張りがあり、色つやがよいものを。また、一般的には色が濃いものほど甘みが強い傾向があります。 |
保存方法 |
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さくらんぼはとてもデリケートなフルーツで、収穫から時間がたてばたつほど風味は損なわれます。なるべく早くに食べるようにしましょう。また、冷蔵には弱いため、その日に食べないのであれば風通しの良い涼しい場所に置いて下さい。冷蔵庫に入れるのは食べる直前1~2時間だけにしておきましょう。 |
よもやま話 |
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●国際結婚しかできない!?
さくらんぼにはたくさんの品種がありますが、同じ品種のめしべと花粉は受粉しないという面白い特徴があります。例えば、佐藤錦を作ろうとして畑に佐藤錦の木ばかりを植えても、実を結ぶことはありません。他の品種の花粉が必要なのです。これを「自家不和合性」といいます。
品種によって相性もあり、佐藤錦と相性が良いのはナポレオン。佐藤錦70%にナポレオン30%を植えるというのが、効果的な割合だそうです。
●「サクランボ」と「サクラ」の関係
「さくらんぼ」、「サクランボ」、「桜ん坊」・・・これらは商品化されたものの通称で、本当の名前は「桜桃(おうとう)」です。
さくらんぼは、桜の木に成るものだと思っている人が結構いますが、それは間違い。サクランボは桜桃の木に成るのです。
桜桃と桜は、どちらもバラ科サクラ属で、近い親戚にあたります。ですがあくまで種類が違うもので、桜桃は甘果桜桃類・セイヨウミザクラの仲間で、桜は酸果桜桃類の仲間です。桜の木にもサクランボに似た実は付きますが、小さくてすっぱく、とても食用にはなりません。
●国産のさくらんぼはなぜ高い?
アメリカンチェリーはお手頃価格なのに、国産のさくらんぼというと「高級品」のイメージがあります。なぜ値段が高いのでしょうか。2つの大きな理由が考えられます。
①栽培・収穫するのに大変な手間と時間、人手が必要であること。
・木はとても背が高く、非常に栽培のしにくい果実です。温室栽培でも、他の果樹より高い構造のハウスを作る必要があります。
・雨に弱く、収穫前に雨に降られると腐ったり、実が割れたりします。これを防ぐために雨よけテントが欠かせません。
・収穫から箱詰めまでをほとんど手作業で行わなくてはならず、何千、何万と一気に実ったさくらんぼに多くの人間がかかりっきりになります。この果実は特に丁寧な扱いと美しい仕上げが要求されるため、機械による合理化が図れません。
・剪定(せんてい)、消毒、交配(受粉)、摘果、鳥よけの工夫、色上げ、選果、箱詰めなど、収穫以外にも1年中手のかかる作業が続きます。
②面積あたりの収穫量が少ないこと。
平均的に見るとさくらんぼは1アールあたり50㎏しか実が取れず、りんごに比べると面積あたりの収穫量は約1/5~1/6に過ぎません。単純に考えただけでも、りんごの5~6倍は高くないと農家の人々はやっていけないことになります。実際は、包装費・その他経費の関係でそれ以上の価格は必要ということになります。 |
品種 |
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●佐藤錦(さとうにしき)
日本のさくらんぼを代表する品種。甘さ、コク、上品さ、美しさ等々、どれをとっても最高級で、今のところ佐藤錦に勝る品種は登場していません。
「ナポレオン」と「黄玉(きだま)」を交配させたもので、育成した佐藤栄助氏の名前をとって1914年にこの名が付きました。
●高砂(たかさご)
純日本的な名前ですが、もともとは「ロックポートビガロー」というアメリカのさくらんぼです。明治5年に北海道開拓使によって導入され、1911年に日本名「高砂」と名付けられました。早生種で、シーズンの先陣を切って登場する品種。
●ナポレオン
晩生種。18世紀からヨーロッパで栽培されていました。ナポレオンが死して後の1821年に、ベルギー王が命名したそうです。さくらんぼの中では酸味のある品種で、暖かい地域でも栽培できるという利点があります。佐藤錦などの親になっているように育種には欠かせない品種になっています。
●ジャボレー
フランス原産の中生種。明治41年に日本に渡ってきた品種です。暗赤色で、現在は食用よりも、ナポレオンや佐藤錦の受粉樹として使われることが多いようです。
●香夏錦(こうかにしき)
佐藤錦と高砂との交雑実生。甘酸適和の食味良好な早生のおうとうである。佐藤錦や高砂と比較して、開花期・成熟期がともに早いこと等で区別が認められます。
●南陽
ナポレオンの交雑実生から生まれた晩生種。1957年に山形県農業試験場で育成され、1978年に登録されました。大粒なのが特徴です。
●紅秀峰(べにしゅうほう)
1991年に品種登録された比較的新しい品種です。晩生種で、6月、7月に出回ります。大玉で甘みが強く、酸味が少ないのが特徴です。 |
栄養 |
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さくらんぼに含まれる栄養素としては、糖質、ビタミンA、ビタミンC、リン、カルシウム、カリウム、鉄分などがありますが、中でも鉄分の含有量が優秀ですので、貧血防止に効果的です。また、カリウムも豊富で、高血圧の予防になります。その他、疲れ目の回復、美肌維持、利尿作用や消炎作用にも良いでしょう。
さらに、サクランボにはソルビトールが含まれ、便のpH値を下げ、便の量を増やす効果があるので、便秘解消が期待できます。 |