歴史 |
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中国原産。紀元前2~3世紀にはすでに栽培が始まっていた歴史の古いフルーツで、花は観賞用、仁は薬用、果肉は生食や加工用に利用され、五果のひとつとして重用されてきました。ここを起点に、その後東アジア地域に根付いた「東アジア系」と、シルクロードから中央アジアを経て地中海性気候に適応した「ヨーロッパ系」に分かれていきました。
日本には平安時代に、東アジア系のものが中国より渡来しました。当時は「唐桃」と呼ばれていたようです。その後「杏子」の中国読みから「あんず」の名が一般化されました。また、品種的にも日本の気候に合うように次第に変化し、「ニホンアンズ」という独特の品種群を形成するようになりました。
今でこそアンズは食用ですが、中国でも日本でもはじめは薬として利用されてきました。アンズの種の仁である「杏仁(あんにん、又はきょうにん)」が咳を鎮める漢方薬として重用されたのです。従って、実を食べるようになったのは江戸時代に杏干として食されたことに始まります。
一方、ヨーロッパ系は、14世紀にはイギリスに渡り、18世紀に入るとアメリカ大陸へと広がっていき、現在はカリフォルニアが大産地に発展しています。英名の「アプリコット」は干しアンズの代名詞になるほどポピュラーになり、世界中に供給されるまでになりました。 |
産地 |
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日本では、長野県や青森県など、比較的寒い地方での栽培が盛んです。長野県は全国生産の約6割、青森が約3割を占めます。特に有名なのは長野県更埴市で、江戸時代に松代藩が勧農政策を進め、今日まで日本一の産地として名をはせてきました。 ただし、これは生アンズの場合であって、日本で食されるアンズの総量の1/4に過ぎません。あとの3/4は加工品であり、そのほとんどは輸入品です。缶詰め・ビン詰め製品は主に南アフリカ、乾燥果実はトルコやアメリカ、砂糖調製果は中国から輸入です。 |
出回り期 |
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6月下旬~7月下旬がシーズン。実際には1つの品種は2週間程度の短いサイクルですが、いくつかの品種がリレーすることによって約1ヶ月間のアンズのシーズンを形成しています。 |
品種 |
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アンズは大別してニホンアンズ、ヨーロッパアンズ、ヨーロッパとニホンアンズの雑種の3パターンになります。
●ニホンアンズ
果肉が締まっていて裂果しにくいのが特徴です。
・平和(へいわ)・・・早生種。アンズ特有の良い香りが楽しめる品種で、特にジャムなどの加工用に最適です。更埴市で発見され、第一次世界大戦の終結を記念してこの名がつけられました。
・昭和・・・中生種の代表的品種で、ジャム・漬物類に最適です。
・信山丸(しんざんまる)・・・早生種。小粒ですが酸味と甘味のバランスが良く、生食・加工どちらにも適します。
●ヨーロッパアンズ
香りと甘味が強く生食向きです。日本のような雨の多い地域での栽培には向きません。
・ハーコット・・・独特の食感があり、生食として最適な品種です。
●ヨーロッパとニホンアンズの交配種
ほとんどが長野県果樹試験場で育成されました。
・信州大実(しんしゅうおおみ)・・・晩生種の代表的品種で、大玉。生食や漬物類に適します。
・信陽(しんよう)・・・早生種。酸味、甘味のバランスがよく、生食に向きます。
・信月(しんげつ)・・・晩生種。加工・生食両用。 |
選び方 |
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形がよく、果皮の橙黄色が濃く、光沢のあるものが良いでしょう。 |
食べ方 |
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きれいに水洗いしてそのまま食べるのが一番簡単。お好みによって2つ割りにして、うす塩をつけたり、砂糖をかけて食べてもよいでしょう。また、ジャムや果実酒にするなどの加工にも大変適しています。作り方は後述します。 |
栄養 |
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カロテンが豊富。カロテンはビタミンA生理効果を有し、発ガン予防、老化防止、粘膜を丈夫にし免疫機能を高める効果があります。また、ビタミンB2、ビタミンC、クエン酸、リンゴ酸等も含まれているので、疲労回復・食欲増進・風邪の予防にも効果があります。 また、干したアンズは生果以上に食物繊維が豊富で、便秘の予防や貧血の予防にも効果があります。 |
レシピ |
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◎アンズの果実酒
材料
アンズ1㎏
氷砂糖・・・300~500g
ホワイトリカー・・・1.8リットル
①アンズは洗って水気をよくふき取り、竹串で突っついて漬け込みます。
②氷砂糖、ひたひたに注いだホワイトリカーとともに、密封できる保存ビンに入れます。
③そのまま冷暗所におきます。
④漬けてから2ヶ月目くらいから飲めます。
※取り出したアンズは、そのまま食べたり、刻んでフルーツケーキに入れたりします。
※アンズはあまり熟していない青み残った黄色いもののほうが良いでしょう。
◎アンズジャム
材料
アンズ・・・1㎏
砂糖(グラニュー糖)・・・500g
①アンズをよく洗い、半分に切り、種を取ります。
②さらに切って1/4カットにし、鍋に入れ、上から砂糖を半分入れます。
③しばらく置いて水が出てきたら、中火で煮ます。
④泡が出てきたら弱火にし、残りの砂糖を入れ、さらに煮つめます。焦がさないように時々かき混ぜ、出てきたあくは取り除くようにします。
⑤コップテスト(※注)をし、程良い煮つまり具合になったら、沸騰殺菌したビンに入れます。
⑥ビンごと沸騰しているお湯に入れ、5分間殺菌処理をします。
⑦ビンを逆さまにして自然に冷まし、熱くなくなったら冷蔵庫に入れます。
※注 コップテスト
コップに水を入れ、ジャムを一滴落としてみます。ジャムが散らずに底まで落ちるようであれば、程よく煮詰まった状態であるといえます。 |