産地 |
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アメリカンチェリーは、大まかに言って、カリフォルニア州とオレゴン・ワシントン州の2大産地に分けられます。オレゴン産とワシントン産を合わせて“ノースウエスト・チェリー”と呼ぶこともあります。 各州の中でも特に生産の盛んな地区は以下のようになります。
1)カリフォルニア州
ローダイ、ストックトン地区・・・カリフォルニア州最大の生産地域。ビング種が中心。
ベーカーズフィールド地区・・・早出し地域。ブルックス種、トゥラーレ種も盛んに栽培。
フレズノ地区・・・ビング種以外にもブルックス種、ツラーレ種生産。
サリナス、ホリスター地区・・・カリフォルニアの中では遅出しの地域。
2)オレゴン州・・・ダラス地区
3)ワシントン州・・・ヤキマ地区、ウエナッチー地区・・・全米最大の生産地。ビング種中心。 |
出回り期 |
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カリフォルニア産は5月初頭から始まって6月下旬まで。 ワシントン・オレゴン産は6月中旬から7月いっぱい。 両者は短期間だけバッティングしますが、だいたい上手くリレー出荷しています。 |
選び方 |
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表面につやと張りがあるものを選びましょう。また、軸(果梗、ステムとも言います)がしっかり付いていて、青々としているものが新鮮です。 |
保存方法 |
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国産のさくらんぼに比べ、アメリカンチェリーは若干日持ちが良いと言えます。そうはいっても非常に傷みやすいフルーツには違いありませんので、早くに食べきるのが一番です。
ちなみに、アメリカからの輸入の多くは船便ではなくエアー便です。収穫されて2~3日で日本に到着し、店頭に並びます。それだけ鮮度保持に気を使っているわけです。 |
アメリカンチェリーの品種 |
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○ビング(BING)
アメリカンチェリーの主力品種。全輸入量の約9割を占めます。1875年にオレゴン州でリパプリカンの交雑実生から誕生しました。 果皮の赤黒い色から別名“ダークチェリー”とも。果肉は濃い赤紫色、果汁も濃紫色です。 酸味が少なく甘みが強いのが特徴。また、病気に強く、果肉が硬めのため長距離輸送に耐えうるという長所が、今日の定着を呼んだといえます。
○レイニア(RAINIER)
BINGとVANの交雑種。日本のさくらんぼに似た赤黄色の果皮が最大の特徴。 果肉は柔らかく、甘みも非常に強いので、ビングが嫌いな人もレイニアなら大丈夫という人が結構いるようです。
カリフォルニアでもワシントンでも栽培されていますから、シーズン全体を通して入荷されています。ただし量的には多くなく、価格もビングよりは高めです。
○ブルックス(BROOKS)
アメリカンチェリーのトップバッターとして、市場に一番早く出回る早生品種です。レーニアとビング種を掛け合わせた交配種で、順調に生育すれば4月中にも登場します。酸味が低いために甘みが強く感じるのが特徴。見た目はビングとよく似ている典型的なアメリカンチェリーです。
○ツラーレ(TULARE)
ツラレーとかチュラーレー、タラリーなどいろいろな呼ばれ方をしています。
ビング種から交配された早生種で、ハート型に似た形が特徴的。ビングよりも1週間程度早く熟す品種で、ブルックスのスタート直後から出荷が始まります。
○ガーネット(GARNET)
ガーネットも早生種です。見た目はビングとほとんど同じ。 早生種の出回りは短期間ですが、これら出来如何によって、「今年のチェリーは美味しいかまずいか」のイメージが決まってしまいますから、大変重要な役回りを担っています。
これらの品種のほかにも、キング(KING)、ランバート(LAMBERT)、バン(VAN)、シュラン(CHELAN 2002年解禁)などたくさんの品種があります。 |
栄養 |
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全体的にエネルギーは低いのですが、カロテン、葉酸、パントテン酸などが含まれています。また、鉄分が多く、貧血を予防するのに効果的。食物繊維も豊富です。
また、最近の研究で、ポリフェノール類(アントシアニン、フラボノイドなど)が含まれていることが判明しました。アントシアニンは高血圧や関節の痛みに効果的で、ケルセチンというフラボノイドの一種は、ガン予防に効くことがわかっています。 |
よもやま話 |
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●カリフォルニア産とノースウエスト産の比較
カリフォルニア産の方が約1ヶ月半早くに出回り、この時期は国産のさくらんぼが少なく、価格も高い時期ですから、ノースウエスト産よりも有利な販売ができると言えそうです。
ただし、ワシントン・オレゴンはアメリカンチェリーの本場であり、食味を比較するとこちらに軍配が上がるというのが一般的な評価です。
●天候に大きく左右される収穫量
チェリーは大変デリケートな果実で、その年の気象状況によって大きく生産量・品質に影響を受けます。雨が降ると受粉がうまくいかなかったり、実が水分を吸って破裂してしまうなどトラブルはさまざま。収穫日になるまで生産地では気を抜けない日々が続きます。アメリカで無尽蔵に生産されているイメージがありますが、高い年・安い年があるのはこうした理由があるのです。
1998年は近年にない大不作の年でした。これはエルニーニョ現象が開花時期を直撃したためであると言われています。
●歴史
ヨーロッパから16世紀~17世紀にアメリカ大陸への移住者によってもたらされたのが導入の最初。栽培が盛んになったのは18世紀以降で、アメリカ北西部、特にワシントン州を中心に大産地に発展しました。 日本の輸入量は1986年頃まではそれほど多くありませんでしたが、国産に比べて出回りが早く安価であることが幸いし、1987年以後急速に拡大しました。さらに1992年に全面自由化になったのを機に爆発的な伸びを示し、現在にいたっています。
●残留農薬について
輸入青果物で消費者が心配するのは残留農薬です。特にアメリカンチェリーは皮ごと食べるくだもの。たくさん食べても大丈夫なのでしょうか。
結論から言えばまったく問題なし。安心して食べてください。
チェリーで問題となるのは、黒かび病などを防ぐ「イプロジオン」という農薬ですが、日本に輸出するチェリーには収穫後、この農薬を使用することを厚生労働省が禁止しています。また、定期的に実施される残留農薬検査でも、イプロジオンは99%の検出されず、わずかに検出された1%についても、基準濃度をはるかに下回るものでした。チェリーシーズンになると植物検疫官が直接産地に入って、検査を実施することもしています。 「それでも心配」と思われる方は、食べる前にさっと水洗いしてから食べると良いでしょう。万一残留農薬があったとしても、水洗いによってその80%は流れ落ちてしまうことがわかっています。
●アメリカ以外からの輸入チェリー
数量は少ないながらも、12月にニュージーランド産が輸入されています。また、2001年よりチリ産も解禁となり、11月後半から12月にかけて出回ります。 |