| 名前の由来 | 
                
                
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                  “マスカット”とは「マスク《MUSK=麝香(じゃこう)》の香りがする」という意味。麝香はオスのジャコウジカがメスを誘うために出す分泌物で、このぶどうの香りが麝香の香りのように素晴らしいということです。高級温室メロンの“マスクメロン”も同じ語源です。   
そして、“アレキサンドリア”は、古代エジプトの首都アレキサンドリアで栽培が行われていたことから名付けられたもので、この地より各地に広まっていきました。 つまり、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」=「麝香の香りがするアレキサンドリアの葡萄」ということです。名前からしてハイカラですね。  
ただ、あまりに名前が長いので通称「アレキ」なんて略して呼ばれることが多いようです。  | 
                
                
                  | 歴史  | 
                
                
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                  原産は北アフリカで、エジプトなどを中心に紀元前から栽培されてきました。誕生から2000年以上にもわたって世界的に栽培されてきたわけですが、あの王妃クレオパトラも麝香の香りに似た芳香・甘みを持つこのぶどうをこよなく好んだといわれています。  
日本へは、明治19年に岡山県に導入されたのが栽培の始まりです。当時、他にもたくさんのヨーロッパ系ブドウが導入されましたが、地中海沿岸の高温・乾燥地で育ったこれらの品種のほとんどは日本の風土に適さず、露地栽培は不成功に終わりました。 岡山県ではガラス温室栽培用として採り上げられ、以来1世紀以上にわたって品種改良・技術開発が進められ、岡山県産アレキの名声を築き上げてきました。 | 
                
                
                  | 難しい栽培  | 
                
                
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                  アレキサンドリアにしても、基本的には日本の風土に合っているとはいえません。ヨーロッパ系品種にとって、日本の気候は雨が多く、湿度が高すぎるのです。したがってアレキサンドリアは、現在でもすべてが温室栽培です。  
高度な技術と施設でもって、温度・日照・湿度管理などが徹底されて初めて高品質なものができるというわけ。アレキが高級品として位置付けられるのは、こんなところにも理由があるのです。  | 
                
                
                  | 最少・最高 | 
                
                
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                  アレキは生産量では全ぶどうのわずかな割合にすぎません。ところが、1㎏あたりの単価は、全体平均の約2倍の価格になっています。構成比率は低いけれども、価格は最も高い・・・“希少価値”という言葉がぴったりきますね。
                   
                  ちなみに、巨峰もかつてはアレキと並ぶ高級ぶどうでしたが、露地栽培の拡大等により生産量が大幅に拡大したため、今では安価に求められる大衆的な果実となっています。 | 
                
                
                  | 出回り期  | 
                
                
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                  温室で加温して栽培されるものは5月から8月、加温しない冷室栽培は9月~11月に出回ります。ピークは7月~10月です。   | 
                
                
                  | 食べ方  | 
                
                
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                  冷やしたアレキサンドリアを房ごと簡単に水で洗い、皮ごと食べるのが最も簡単かつおいしい食べ方。  
皮ごと食べることに抵抗のある人が(特に日本では)多いのですが、残留農薬などほとんどありませんし、万一あったとしても、水でさっと洗えば落ちてしまいますから安心してください。  
また、よく表面に粉のようなものが浮き出ていることがありますが、これはブルーム(または果粉)といって、ぶどうから分泌される糖分やミネラルですので、まったく心配ご無用。むしろこれはおいしく新鮮である証なのです。  | 
                
                
                  | 保存方法  | 
                
                
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                  ビニール袋に入れ、冷蔵庫で保存すれば長持ちします。  温室育ちのアレキサンドリアは、軸が枯れても却って味が良くなり、風味、栄養価が損なわれることはありません。 | 
                
                
                  | 仲間  | 
                
                
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                  アレキサンドリアは、新品種の親としても幅広く活躍しており、一連の「マスカット系」を形成しています。その代表的なものをご紹介しましょう。  
                   
                  ●ネオ・マスカット  
                  1932年、岡山県の広田盛生氏が、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と「甲州三尺」を交配して誕生させた品種です。ネオ・マスカット最大の特徴は、露地栽培ができること。アレキが温室栽培しかできないのに対し、ネオ・マスカットは露地栽培も可能なことから、岡山県以外でも広く栽培されるようになりました。現在、最大の産地は山梨県で、全生産量の50%以上を占めています。色・味ともにマスカット・オブ・アレキサンドリアに似ており、価格も安く提供できることから、マスカットの普及型として人気を得ています。出回り期は7月~9月です。    
 
                  ●マスカット・ベリーA  
                  アメリカ系の「ベリー」とヨーロッパ系の「マスカット・ハンブルグ(ブラックハンブルグ×アレキサンドリア)」の交配によって1927年に新潟で育成された品種。日本で作られる赤ワインによく利用されるのはこの品種です。果皮の色が黒いのが特徴。大房・大粒で、濃厚な甘みと酸味を誇ります。出回り期は8月~10月で、ぶどうシーズンの最後を飾る品種です。    
 
                  ●ロザリオ・ビアンコ  
                  1976年、山梨県で「ロザキ」と「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を交配して誕生させた品種。黄緑色で大粒。皮は薄いですがしっかりしています。露地栽培も可能で、味はまろやかで多汁。    
 
                  ●紅アレキ(ベニアレキ)  
                  アレキサンドリアの枝変わりで、名前のとおり紅紫色の果皮。  
別名を「ローデハネポート」とも言います。  
糖度が非常に高く、マスカットの香りも非常に強い品種です。  
 
                  ●甲斐路(かいじ)  
                  アメリカの「フレームトーケー」と「ネオ・マスカット」を交配させて作った品種。  
日本で育成された日本らしい名前ですが、血筋的には純欧州種です。  
果皮は明るい紅色。大粒で果皮が薄く多汁。山梨県が主産地。 |