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果実の知識

文 旦
buntan
~気品ある香り放つ“柑橘の女王”~
文旦は柑橘類の中では最も大きく、1個2㎏以上の品種もあるほど。そのため、“柑橘の女王”とも呼ばれています。また、大変かぐわしい香りが特徴的。ポンと1個置いておくだけで爽快な香りが部屋中にたちこめます。
食味も爽やかで歯切れがよく、甘味に加えてほんのりとした苦味があり、かえって後味をよくしてくれます。
出回り期
ハウス栽培の普及により、10月頃より姿を見せはじめます。ただし本来の旬は2月~4月です。
露地栽培の場合でも、多くは12月に収穫され、貯蔵されることにより酸抜けが施され、翌年晩冬~初春に出回るパターンが多いようです。
産地
文旦は南国の柑橘で、全国生産量の90%近くを高知県が占めます。
ただし品種によって地方色が強く、土佐文旦なら高知県、阿久根文旦なら鹿児島県、晩白柚なら熊本県が栽培の中心です。
歴史
マレー半島からインドネシアにあたる地域が原産地と考えられています。
そこから中国、東南アジアに伝わり、江戸時代初期に日本に渡来したようです。
品種
●土佐文旦(とさぶんたん)
法元文旦という鹿児島県の品種が昭和4年(1929年)に高知県に導入されたのがきっかけで栽培が広まり土佐文旦と名付けられました。高知県の土佐市、宿毛市、須崎市、南国市、香我美町などで多く栽培されています。
1個400g~600gの大きさが主体。表面は黄色で非常に滑らか。果肉は淡黄色。高知県の特産として有名で、文旦類の中では最も生産量の多い品種となっています。
露地物の出回りは2月~3月中心。ハウス物は12月の年末商戦がピーク。ハウス物は露地物よりも果肉の色が濃い黄色で、外皮も薄いのが特徴です。

●水晶文旦(すいしょうぶんたん)
昭和27年ごろ、土佐文旦と晩生柑のかけ合わせによって高知県室戸市吉良川町の戸梶清氏が育成した品種で、昭和33年に田中長三郎博士によって「水晶文旦」と命名されました。果肉は“水晶”のようにキラキラと輝くような光沢をもっています。
大きさは土佐文旦と同程度ですが、皮が薄く、種子が少ないのが特徴。文旦の中の最高級品と位置付けられています。

●晩白柚(ばんぺいゆ)
大正9年(1920年)、ベトナムのサイゴン植物園から台湾に導入されたのが最初で、在来の白柚より晩生のため「晩白柚」と呼ばれるようになりました。日本へは昭和5年(1930年)に鹿児島県果樹試験場、昭和8年(1933年)に熊本県果樹試験場に導入されました。
文旦類の中でも最も大きな果実で、なんと2㎏~3㎏にもなります。そのあまりの大きさから“食べるフルーツ”としてよりも“飾るフルーツ”としてのニーズの強い珍しい果実です。
ブンタンとザボンと謝文旦
本や辞典などで文旦のことを調べると、「別名をザボンという」とあります。ということは「ブンタン」=「ザボン」になるわけですが、この辺は名前の由来もからんでなかなか面白い話になります。
文旦とザボンを同じ物と捉える人も多いのですが、言い伝えからいけば“果肉が淡黄色のものを文旦、赤紫色のものをザボン”と区別するのが正しいのかもしれません。果肉が赤紫色のものは鹿児島県阿久根市を中心に栽培される阿久根文旦(あくねぶんたん)があります。
1772年(安永元年)、中国の朱印船が難破し、鹿児島の阿久根港に漂着しました。その船の船長・謝文旦(しゃぼんたん)は日本での手厚いもてなしに感謝し「朱楽」「白楽」という2つの珍しい果物をお礼に置いて帰国していきました。両方とも種から実生し、果肉の赤い「朱楽」には「謝文(しゃぼん)」、果肉の白い「白楽」には「文旦(ぼんたん)」と“謝文旦”の名を二つに分けてつけたという言い伝えがあるのです。「シャボン」はやがて「ザボン」と呼ばれるようになり、「ボンタン」は「ブンタン」と呼ばれるようになったということです。
ただし、名前の由来には異説があります。
「ザボン」はポルトガル語のザンボアからとったものであり、「文旦」の「旦」は中国で俳優を意味し、「文さんという名の俳優の庭に見事な柑橘があったことから文旦となった」というものです。
果たしてどちらの説が正しいのでしょう!?
選び方
手に持ってずっしりと重量感があり、ヘタが枯れていないものを選びましょう。また、文旦特有のかぐわしい香りが漂ってくるものを。さらに、果皮の油胞(小さな粒々)を触ってみてなめらかなものが上質です。
保存方法
文旦は皮が厚く、柑橘類の中では日持ちの良いフルーツです。風通しの良い冷暗所に置いておくだけで2~3週間は大丈夫でしょう。
ラップをして冷蔵庫に入れておくとさらに日持ちはよくなりますが、かなり場所を取ります。香りを楽しむためにも、室内に置いておくのがお勧めです。
栄養
文旦に高血圧を抑える効用があることは昔から有名でした。現代の研究によって、それはナリンギンという物質の働きであることがわかってきました。ナリンギンは苦味成分で、ビタミンPの一種です。これがビタミンCと協力し、血液をサラサラにして血管を強くする効果をもたらします。
また、文旦の皮には「オーラプテン」という発ガン抑制物質が含まれているとの研究結果も最近発表されました。
ここで問題なのは、ナリンギン、オーラプテンとも外皮やじょうのう(子袋状の薄皮)に多く存在する物質であり、果肉にはほとんど含まれていないということです。文旦の皮は苦いので、食べる際には完全に皮を取り去るのが普通。誰も苦いフルーツを好んで食べたくはありません。このままでは文旦の恩恵を受けることはできませんから、皮を使ってマーマレードを作ったり、漬物にするといった工夫も試みられています。
食べ方
文旦は皮の厚いフルーツです。外皮はもちろん、じょうのう(子袋の薄皮)にも苦味がありますから、食べるときはきれいに皮をむいて果肉だけにする必要があります。以下の要領でむくとよいでしょう。
(※高知県園芸連の文旦リーフレットより転載)


①文旦を逆さにして尻より皮部に十文字の包丁目を入れます。
②帯部を離さない様に外皮をむいて中身を取り出します。
③さらに手で四ツ割にして離します。この場合も尻部より割ると割り易いものです。
④点線の様に芯に包丁を入れて芯部を取り除きます。
⑤この様にしますと種子が芯部に集っていますので楽に取り除く事ができ、皮はむき易く果肉のみがきれいに取り出せます。
②の四ツ割の皮の中へ果肉を盛り上げればより風情もあり、美味しくいただけます。
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